読書の独書

私の為に本を読みあなたの為に書く書評

ま、IT産業もオワリだけど、あんたら株主の奴隷になってるよ。

新しい資本主義 (PHP新書)

  日本が秘める資本主義の新しい形。日本がこれからの世界に向けて手本となりそして主導していくための方向性を提唱した一冊。株主のための金融資本主義から脱却し、社会に貢献し人々が本質的な豊かさを手に入れるための公益資本主義を提唱している。

新しい資本主義への三本柱

  1. 株主のために存在している会社
  2. IT産業って終わってる
  3. ヨノタメヒトノタメ

株主のために存在している社会

 近年、アメリカを中心に金融工学を駆使したファンドがマーケットを支配してきた。株主の利益を最大にする事。それが企業の果すべき役割であるという考えこそが株主市場主義であり、金融を大きくすることが第一の責務であるかの様な振る舞いは金融資本主義における一つの形である。

株主至上主義の最大の問題は産業の弱体化に他ならない。株主利益を最大にするため企業は短期利益つまりIRRやROEを追求する様になってきた。一方でコア技術を必要とする新たな基幹産業には中長期の開発期間が必要である。

金融は実際に何かを作りだすわけではない。したがって産業の主役になってしまってはならない。それを払拭し株主至上主義から脱却しなければならない。

IT産業って終わってる

 コンピューターを中心としたIT産業は既に成熟し衰退期に入っている。その一つの兆候として現在のIT産業の主役は新しい技術ではなく、その使い方が主役になっていることがあげられる。また現在のコンピューターの理論では限界があるとも主張する。

確かに今の日本を見ればそれは明らかで、SNS等の様に既存技術の組み合わせが主役になっている。

 

つまり今のコンピューターの次の世代ポストコンピューターの時代を考える必要がある。コンピューターは元々演算目的のためのものであり現在の様なネットワーク、コミュニケーションを主流に設計されたものではない。PUCというコンセプトを前提とした全く新しいコンピューターを実現するためにもコア技術を開発する必要性があるとここで述べられている。

 

IT産業に代わる新たな基幹産業が必要なのである。

 

PUC(Pervasive Ubiquitous Communications)というコンセプト

使っていることを感じさせずどこでも偏在しているコミュニケーション機能。最近では聞く事も多くなった、コンピューターと意識しないコンピューターとも言えそうである。

 

ヨノタメヒトノタメ

 公益資本主義。会社の事業を通じて公益に貢献していく資本主義のこと。これこそがこの著のタイトルにもなっている「新しい資本主義」である。つまりはヨノタメヒトノタメというわけだ。

 

ここでは著者・原丈人氏の所属するアライアンス・フォーラムより公益資本主義への取り組みとして二つの例が紹介されている。

 

 bracNETプロジェクト

"次世代技術を活用した民間によるバングラデシュでの途上国支援

bracNet プロジェクトとは、 最新技術を活用して、遠隔教育と遠隔医療サービスを展開し、識字率を高め、教育と健康管理など、途上国の生活水準を改善する、「 援助ではなく、民間による事業 」で途上国支援を行うプロジェクトのひとつです。"

bracNetプロジェクトについて | bracNetプロジェクト | 途上国支援事業部門 | アライアンス・フォーラム財団


スピルリナプロジェクト

"スピルリナ・プロジェクトとは、たんぱく質含有量の高い、食用藻スピルリナを使って、途上国の栄養不良、飢餓、それらが原因で引き起こす様々な病気を撲滅するという目的を持った飢餓・栄養不良改善のプロジェクトです。"

スピルリナ・プロジェクトについて | スピルリナプロジェクト | 途上国支援事業部門 | アライアンス・フォーラム財団

 

その他

陰りの見え始めているIT産業に全く新しい光を取り入れる新しい基幹産業を生み出す。そのためにまず現在の金融資本主義は終わらせねばならない。社長のためでもない。どこぞの得体のしれない株主のためにまだ社畜続けますか。

 

関連

  1. bracNetプロジェクトについて | bracNetプロジェクト | 途上国支援事業部門 | アライアンス・フォーラム財団
  2. スピルリナ・プロジェクトについて | スピルリナプロジェクト | 途上国支援事業部門 | アライアンス・フォーラム財団
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